「瑞穂の国」と呼ばれる我が国の水田稲作は縄文時代後期にはじまり、時代の為政者と多くの人々の力によって農地・水利施設などの生産基盤が整備されてきた。この間、農村集落では四季に応じた共同作業や祭祀が絶えなく繰り返され、水不足の際には話し合いや、時には紛争を経て、限りある国土の中で「和」を維持するための行動様式を身に付けてきた。
令和という時代の転換期を迎えた今、農業用水(水)、農地(土)、農村集落(里)がこれまで辿ってきた歴史的経緯を皆様とともに見つめ直し、水土の資産を次世代に引き継ぐための新たな足がかりとしたい。
「水の章」では農業土木のルーツとなる「水を利用する技術」に着目し、文明の誕生から現代に至るまで先人たちが深くかかわってきた「水」の歴史を振り返り、農業土木技術の将来を展望する。
豊潤な流れに光射す松浦川(佐賀県唐津市)
昭和30年代にピークを迎えて現在急減している我が国の「農地」。有史以来、我が国の命の拠り所である「農地」の歴史を紐解き、史上初となる人口減少の時代において瑞穂の国の変わらぬ風景を次世代に引き継ぐためのヒントを探求する。
肥沃な農地に丹頂が舞う釧路平野(北海道釧路市)